猫かぶりな男とクールな女
気付けば、目の前の皿は全て綺麗に片付けられていた。
皿をさげて戻ってきた店員が今度はデザートをテーブルの上に並べ始めた。
大きな皿の中央には、小さなケーキと2種類のアイスが可愛らしく盛り付けられている。
「お飲み物はコーヒーと紅茶をご用意しておりますが…」
「コーヒーで」
「私は紅茶をお願いします。」
…コポコポコポコポッ
目の前で、いい香りを漂わせながらカップにコーヒーがそそがれていく。
「……………」
「……………」
紅茶が注がれる間も、異様な沈黙が二人を包みこんだ。店内のBGMさえも小さくボリュームダウンされたのではないかと疑ってしまうほど、その静けさが蒼介を息苦しくさせた。
「新嶋さん……」
手元に置かれたカップに視線を落としたまま、美奈子は口を開いた。
「私、新嶋さんの事が好きなんです。」
「……………」
蒼介は眉をピクリと上げて驚いた表情をしてみせた。
本当は大分前から気付いていたとは口が裂けても言えない。