One Day~君を見つけたその後は~
「もーうっ! 先生ってば、人をからかうの、やめてよね!」

照れ隠しに先生の肩をバンバン叩きながらも、顔はついついニヤけてしまう。


……だって、改めて考えてみたら、“山野上深月”ってとってもロマンチックな名前じゃない?


美術の教科書だったかな? 
それとも社会見学で行った美術館?

どこだったかは覚えていないけれど、以前、とても綺麗な月の絵を見たことがあるのを思い出した。


暗闇に幻想的に浮かぶ三日月が、静かに地上を照らしているの。

月の下は真っ暗で、山と湖があって、古城が佇んでいて……。


まるで、その絵のような名前じゃない?

どうしよう!
ものすごく、嬉しすぎるんだけどー!!


……それなのに。

滝田先生が次に言った言葉は、これだった。


「ははは、これみたいだよなー」


そう言って私に見せたのは、タバコと一緒に持ってた100円ライター。

そしてそこに描かれていたのは……


「似合ってるぞ。“月見で一杯!”ってな」


……花札じゃんっっ!!


花札のルールを知らない私でも、この絵柄はよく知っている。

たしか「ボウズ」って呼ばれてるんだよね?

その絵の下半分は山。
草も木も生えていない、のっぺりとしたハゲ山で。

そして上半分には、まん丸で真っ白な、バカでかい月……


「ちょっと待ってよー! これじゃ、山より月の方がデカイじゃん! 月がものすごーく、偉そうじゃん!!」

ありえないってば!
私のイメージは、あくまでもロマンチックな絵画なのにー!


……って声を張り上げたら、後ろから笑い声が聞こえてきた。


「先生、サイコー」

振り返ると、そこにいたのは慎だった。



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