One Day~君を見つけたその後は~
そして、誰もいなくなったロビー。

私はソファに深く座り直すと、ポケットから携帯を取り出して、もう一度“オレ様”からのメールを開いた。

「“いい子にしてるか?”だって」

わざと口に出して読むと、なんだかおかしくなってくる。

だって、短くてぶっきらぼうな文面は、三ヶ月前と何も変わっていないんだもん。


……そう。これが、“オレ様”なんだよね。


久しぶりだって言うのに、当たり前のようにヤマタロのことを“オレ様”って呼んでしまうなんて。
条件反射って怖いな。


でも、あの頃とは違うのは、ちゃんと携帯の画面の向こうにヤマタロの顔が見えているっていうこと。

もう、顔の見えない不思議な存在なんかじゃない。

“オレ様”なんだけど、姿はちゃんとヤマタロで。

今頃ヤマタロは、自分の部屋でパソコンに向かって、片肘ついてめんどくさそうに私からの返事を待ってるんだ。


もう……。
メールはめんどくさいから、二度としない! って言ってたくせに。


──この三ヶ月の間に、私は何度か“オレ様”にメールを送っていた。

だけど、一度だって返事を貰えたことはなかった。
そのかわりに、メールを送ったあとは必ず電話がかかってきて。

『こうして話してるんだからいいじゃん。メールのことはもう忘れろ』

って、ちょっと不機嫌そうな、命令口調で言われたんだ。


……それなのに。
こんなときにいきなり、しかもあの時と同じ22時ちょうどに、メールをくれるなんて。


「こういうとこが狡いんだよ……」


素直に返事をするのはなんだか負けた気がして悔しいけど、私の指は勝手に携帯のボタンの上を滑っていた。

だって、やっぱり嬉しいんだもん。
ものすごく、嬉しいんだもん……!

だから。


<いい子にしてるよ?>


それだけ書くと、私は「えい」って気合いを入れて送信ボタンを押した。

< 137 / 179 >

この作品をシェア

pagetop