One Day~君を見つけたその後は~
ホテルが寂れていたことや、合奏の時にみんな泣いちゃったこと。
夜、コーラで酔っ払ったタケちゃんの相手をするのが大変だったこと。

そんな話を、ヤマタロは時々頷きながら聞いてくれて。

「……で、ね。夜、先生と二人だけでゆっくり話したんだ」

続けて、ロビーで会ったときの、先生の情けない浴衣姿の話をすると「あいつらしいなぁ」って笑った。

“あいつ”って……なんだか友達みたい。
一応、担任なんだけど。

でも、滝田先生だし、仕方ないか。


「そうそう! そういえばっ!」

そこで思い出したのは、“山野上深月”っていう名前が花札の絵柄っぽいって、からかわれた話。

思い出したらまたじわじわ怒りがこみ上げてきた。

……もうっ、先生ってば!

眉間にしわが寄り、キッと目が釣りあがる。


すると、私の変化にすぐ気づいたヤマタロが、まじめな表情で私の顔を覗き込んできた。

「ん? どうした?」

「え……っ」

思わず固まってしまう私。

「何かあった?」

……やばい。

先生に“永久就職”を薦められたなんて、ヤマタロには口が裂けても言えないよ……。


私はあわてて話題を変えた。

「えーと……。大学の話、したっ!」

ちょっと不自然だったかな……。

でも、ヤマタロは気にならなかったみたいで、

「そこでまじめな進路相談?」

って笑ってくれた。
< 155 / 179 >

この作品をシェア

pagetop