One Day~君を見つけたその後は~
「これ、つけて行ってたんだ?」

私が今日もその宝物をつけていることに気がついたヤマタロは、すごく嬉しそうな顔をしてくれた。

「うん。 昨日だけじゃなくて、ずっとだよ。お風呂以外は外してないから」

「安物なのに」

「そんなの関係ないよっ!」

だって、ヤマタロにはじめてもらった宝物なんだから。
いつだって肌身離さずつけていたいと思うの、当たり前だよ……。


……っていうか、大学の話はもういいのかな?

「まだピカピカじゃん。大事にしてくれてるんだな」

って、ご機嫌な口調でネックレスに手をのばしてきた。


……えーと。
さっきから、かなり顔が近いんですけど。


身を乗り出してネックレスを覗き込んでいるヤマタロの前髪が、時々微妙に私のほっぺたをくすぐる。

そのたびに、私の背筋はピンとまっすぐ伸びていった。


ちなみに私の顔は、正面に置かれたパイプハンガーにかかっているヤマタロの制服を見つめたままだ。

だって、これ以上顔を近づけたら、私の鼻息や心臓のドキドキ、聞かれちゃいそうだもん。


……それなのにヤマタロの落ち着きっぷりときたら、どうなんだろう?

ネックレスを見つめながらの瞬きさえも、ゆっくり。

横目でチラッと覗き見すると、長くて黒いまつ毛がまるでスローモーションみたいに上下している。


私なんて、さっきから、心臓の倍以上の速さでパチパチパチパチ。大忙しだっていうのに……。


やっぱり、ヤマタロはずるい!
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