One Day~君を見つけたその後は~
「そういえば前に、学校でチョコにも自慢してたよな?」

「やだ、見てたの!?」

足を組み替えながら、ヤマタロが軽くうなずく。


あれは確か、ネックレスをもらってすぐのこと。

教室で、チョコとふたりで大喜びしたことがあったんだけど、まさかそれを本人に見られていたなんて。

今更だけど、すごく照れくさい……。


「ていうかあの時、クラス中の注目浴びてたけど?」

「うそっ!」

「本当だって。前から思ってたけど、お前たち声でかすぎだから。恥ずかしいから、これからはオレの名前出さないでくれる?」

出た!
時々飛び出す無慈悲なセリフ!

そんなこと言われても、絶対無理だよー。


でも、その口調はいたって穏やかで、むしろ機嫌が良さそうにも聞こえる。

どうやら本気ではなく冗談……私の反応を楽しむための軽いイジワルみたいだ。


「だって……すごく嬉しかったんだもん」

「だからって、大騒ぎしすぎなんだよ。大したものじゃないのに。おかげで陽人にも『一体何をあげたんだ?』って聞かれて、返事に困って……」

そう言うなり、ヤマタロは急に黙り込んでしまった。

「……」

視線はネックレスに向けたまま、口元に手を当てて……。
 
ヤマタロ、なに考えてるの?

「…………」


時間にすると、ほんの2、30秒だったと思う。

だけど、やっぱりダメだ。これ以上沈黙が続くのは怖い!

私は恐る恐る尋ねてみた。

「……どうしたの?」


すると、ヤマタロが急に肩を震わせて、くっくっと思い出し笑いをはじめた。

「そうそう、あのとき……」

姿勢を正して、組んでいた足も元に戻して。
一呼吸おいてから、もう一度ゆっくりと顔を近づけてくる。

……え? 何??

「深月」

そして、相変わらずゆっくりとまばたきをしながら私を見つめると、甘えるような声で、こう言ったんだ。


「ちょっと、“ワン”って言ってみて?」
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