狂想曲
ふらふらと街を歩く。
祭りからの帰りで賑わう人々を横目に見ながら、私は、人の少ない路地裏の方へと徐々に足を向けていた。
泣き過ぎて目は腫れぼったくて、おまけにもう思考する気力さえないから、ここがどこだかはわからない。
古いビル街の裏口が立ち並ぶ薄暗い場所。
ついに疲れ果てた私はその場でうずくまるように膝を抱えた。
奏ちゃんとキョウの顔が交互に浮かぶ。
私は、ビル街に四角く切り取られたような空に淡く輝く月を見上げた。
息を吐いたらまた涙腺が緩む。
だけども泣かないようにと顔を伏せたその時だった。
「おいおい、オネーチャン。そこ邪魔だから。うちの店の裏口塞いでんだよ。どきな」
声に弾かれたように顔を上げる。
ぼやけた視界のままに見上げると、
「あ……」
見覚えのあるその人と、ほぼ同時に声が漏れた。
「えーっと。……りっちゃん、だっけ?」
確か、名前は、トオルさん。
いくつかのペットボトルの入った買い物袋片手の彼は、咥え煙草で私と同じ目線の位置までしゃがんでくれた。
けれど、びくりとした私は反射的に身を引いてしまう。
「こんなとこで何やってんの? キョウが花火一緒に見に行くって言ってたけど。あいつとはぐれたか?」
私はふるふると首を横に降った。
瞼の淵に熱が宿る。
どれだけ泣いても涙が涸れてはくれなくて。