狂想曲
「面白い人」


私はキョウさんとやらを見た。


やっぱり奏ちゃんに似てなくもない。

だから一方的に、変な親近感を持ってしまうのかもしれないけれど。



「……キョウさん、だっけ?」

「キョウでいいよ」


キョウさんとやらは――キョウは、そしてグラスに三分の一ほど残っていたアルコールを喉の奥に一気に流し込んだ。

私はその横顔に問いかけた。



「ねぇ、それで、何でまた私の前に?」


キョウは宙を仰いで、ふう、と息を吐く。


私は答えを待つつもりだった。

けれど、それは、簡単に遮られた。



「律!」


弾かれたように顔を向けると、片手を上げた百花が人の間をかいくぐるようにしてこちらに近付いてきた。


私はもう一度、隣に目をやった。

なのに、そこにいたはずの人の姿はなくなっていて。



「ごめんねぇ、遅くなっちゃって。あいつ話長くてさぁ」


平謝りの百花に、私は、



「ねぇ、百花も見たよね」

「何がぁ?」

「今、私の隣にいた人だよ! 奏ちゃんにちょっと似てる人!」


前のめりに聞いた私に、百花は一瞬きょとんとして、でもすぐに大袈裟に笑いながら、



「ちょっと、何言ってんのよー? あんた今ひとりだったじゃーん! まさかお化けと話でもしてたぁ?」
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