雪解けの頃に

3】彼の言葉

『僕はもうすぐこの世を離れる。
 
 おそらく桜を見ることはないだろう。
  
 心残りと言えば、最後に力いっぱい君を抱きしめて

 その感触を僕の体に覚えこませることが出来なかったこと。
 
 今では自力で立ち上がることすら困難な状態だ。



 ごめん。
 
 春先には海外から戻る君を待っていてあげられなくて。

 ごめん。
 
 “病気なんかに負けないで”って、ずっと励まし続けてくれていたのに。

 ごめん。ごめんね。


 ごめん……。
 


 二人で過ごした時間は色あせることなく、今も僕の胸に残ってる。

 理花に逢えて本当によかった。
 
 
 
 愛してるよ。



 雪解けの頃に僕が眠る地においで。
 
 君の好きなスノードロップがたくさん出迎えてくれるはずだから。


       1月5日    橘  雄一  』
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