雪解けの頃に
 一枚目の便箋の彼の名前まで目を通した理花の瞳からは、次々と雫が溢れ、頬を伝い落ちる。

 止めようと思うけれど、自分の意思とは裏腹に、涙は流れてゆく。


「や……、やだ。雄一ったら、馬鹿じゃないの?

 冗談なん……か、書いちゃって。

 エイプリルフールは……、まだ……まだ先だよ」
 

 涙で手紙の文字がにじむ。

 唇が震えて、言葉がうまく紡げない。


 こんな趣味の悪い冗談を笑い飛ばしたいのに……。

 理花の顔はガチガチにこわばっていて、とても笑うどころではない。


 涙はどんどん溢れてくる。



 もはや涙を止めようという気持ちもなくなってしまった。


「わ、私は……、こんな……くだらないことに、ひ……、引っかかったりは、しないんだから……」

 ぽた……り、ぽたり……。

 ひとしずく、またひとしずくと頬を伝う。

 この間にも、理花の心の中では不安が育ってゆく。

 

 猛烈な勢いで、不安が広がってゆく。
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