雪解けの頃に
『顔つきもすっかり変わってしまいました。

 でも、その顔は何かを守りきったという安堵の表情にも見えました。


 雄一はあなたの夢を最後まで守りきったことに対して、誇りを持っていたのでしょう―――あなたのことを愛する彼氏としての誇りを。

 親よりも早くにこの世を去ってしまった息子に対して、ものすごく残念で仕方がなかったのですが、これほどもまでにあなたに対して真剣だったあの子は私たち夫婦にとって自慢の息子です。

 死を間際にして、なおも人を深く愛することの出来る雄一の強さをまざまざと教えられました。

 理花さんと出会い、あなたを愛することが出来て、雄一は幸せな時間が過ごせたことでしょう。

 例え26年間という短い人生でも、彩り鮮やかなものだったはず。



 願わくば、あなたと雄一の結婚式を見てみたかったものです。



 主人の実家がある新潟県のA市のお墓に、雄一は眠っています。

 寒さが厳しくなる前に、雄一の希望でお墓の周りに花の球根を植えました。
 
 お時間があるときにでも、行ってあげてください。

    2月28日        橘 ゆり子

 追伸 花の写真を一枚同封してあります。  』




「写……真?」
 
 理花は涙をぬぐい、膝の上に置いた封筒の中を覗く。
 
 そこには書かれたとおり、写真が入っていた。

 そっと封筒から取り出す。


 白く小さな花びらを持つ、とても可憐な花。

 

 理花は何気なく写真の裏を見た。

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