天体観測
「私は……そんなことないと思うけど」

「僕としては何かあった方が面白いねんけどなあ」

「ろくな大人じゃないね」

「ほっといてくれるか」

僕とマスターは軽く睨み合って、雨宮はそれを見て笑った。

「それにしても……遅いね……恵美と村岡くん」

「サッカー少年は練習で、べっぴんさんは病院やないか?」

僕はわかっていた。少なくとも村岡は練習なんかじゃない。きっとあいつは厳しい父親にこってりしぼられた末、軽い軟禁状態になっているに違いない。

「それよりも、さっき雨宮と話したんだけど、次に起こす行動は第一発見者とのコンタクトにしようと思うんだけど、どう思う?」

「他に手が無いって言ったらそれまでやな。でもそれって何か意味あんの?あくまで第一発見者であって目撃者じゃないんやろ?」

「警察の調書との食い違いがあるかもしれないだろ?マスターの言う通り、裏があるなら」

「調書はどうやって手に入れんねん。貸してくださいって言っても貸してくれるもんやないで」

「恵美から言ったらいけるかもしれない」

「そんな簡単なもんやないと思うけどな。でもまあ、第一発見者とコンタクトをとるってことしか出来ることが無いんやし、やってみたらいいさね」

僕らは緊張から解き放たれて、安堵のため息を漏らした。そのとき、店のドアが開き、カランコロンと風鈴の音が鳴った。

< 101 / 206 >

この作品をシェア

pagetop