天体観測
結局、恵美も村岡も、HIROに来なかった。僕はあの後、震えが止まらないまま雨宮を駅まで送り届けて、いつもと比べると早過ぎる帰路についた。
我が家の時計は四時を少し回っている。震えの治まった僕は、居間のソファに座って、ただぼっーとニュースを見ている。
ニュースはまだ府議の斡旋収賄を取り上げていた。府議は自殺したものの、共謀者が見つかっていないのだ。それでも、何を知っているのかわからない解説者は「すぐに解決するでしょう。警察側はほとんど人物を特定してるでしょうから」なんて誰でも言えそうなことを言っている。
僕は何か行動していなくては気が変になりそうだったので、掃除をすることにした。
居間ではフローリングを掃いて、乾拭きし、ダイニングでは主にテーブルの艶だしを、キッチンではシンクを光りだすまで磨いた。
汗だくのまま自分の部屋に取り掛かろうとしたとき、玄関のドアが開いた。
心臓からも汗が出そうな気持ちを抑えて、僕は「おかえり」と言った。
返事がなかった。その代わりに、僕の腕をつかんで、掃除したばかりのテーブルに僕を無理やり連れていき椅子に座った。
僕はそれに倣って椅子に座り、汗をシャツで拭った。
「どうしたんだよ」と僕が聞いた。また震えが戻ってきた。
「ごめんね」と言った母さんの声は、謝罪には相応しくない、挑むような声だった。
我が家の時計は四時を少し回っている。震えの治まった僕は、居間のソファに座って、ただぼっーとニュースを見ている。
ニュースはまだ府議の斡旋収賄を取り上げていた。府議は自殺したものの、共謀者が見つかっていないのだ。それでも、何を知っているのかわからない解説者は「すぐに解決するでしょう。警察側はほとんど人物を特定してるでしょうから」なんて誰でも言えそうなことを言っている。
僕は何か行動していなくては気が変になりそうだったので、掃除をすることにした。
居間ではフローリングを掃いて、乾拭きし、ダイニングでは主にテーブルの艶だしを、キッチンではシンクを光りだすまで磨いた。
汗だくのまま自分の部屋に取り掛かろうとしたとき、玄関のドアが開いた。
心臓からも汗が出そうな気持ちを抑えて、僕は「おかえり」と言った。
返事がなかった。その代わりに、僕の腕をつかんで、掃除したばかりのテーブルに僕を無理やり連れていき椅子に座った。
僕はそれに倣って椅子に座り、汗をシャツで拭った。
「どうしたんだよ」と僕が聞いた。また震えが戻ってきた。
「ごめんね」と言った母さんの声は、謝罪には相応しくない、挑むような声だった。