天体観測
「本当に可愛くないわね」

「悪かったね」と言って僕は立ち上がった。そして冷蔵庫から残り少ないミネラルウォーターを取り出して、椅子に戻った。

「再婚とか、考えてるの?」と僕は聞く。

「どうかしらね」と母さんはあさっての方向見ながら、言った。

「再婚しないなら、父さんと離婚した意味がない」

「あの人と別れたのは罪悪感を感じたくなかったの。浮気ってやっていいことじゃないしね」

「離婚だって、ほいほいやっていいものじゃないよ」

「それはそうよね」

「本当にしないんだね?」

「司にとっても、このままがベストだと思わない?」

「何がベストか、今決めることなんて出来ないよ。少なくとも僕にはね」

「じゃあ、この話はこれで終わり。それよりも、司たち厄介なことしてるようね」

僕は白髪まじりの喫茶店のマスターに聞こえるんじゃないかと思うくらい大きな音で舌打ちをした。

「聞いたの?」

「だいたいね」

「どのくらい」

「そうねえ、だいたい雨の日の宝探しから第一発見者とコンタクトをとろうとしてるところまでかしら」

「全部じゃないか」

「全部みたいね」

僕は呆れてため息をはいて、大阪の人のバイタリティーは会話にあるんだと再確認した。
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