天体観測
「あそこの滝ってたしか……」

「そんなん関係ないよ。滝は滝。涼しくて、マイナスイオンが出てればいいの。」

「それでいいのかよ。たしかマイナスイオンって落下する水から出るんだろ?じゃあ水道水でもいいじゃないか」

「おもしろくないなあ。ひねくれてるっていうか、性格悪いよ」

「うるさいな。それに隆弘の見舞いはどうするんだ」

言ってしまった後、僕はしまったと思った。さすがにタイミングが悪い。

「うん。本当は行きたいねんけど、前から約束してたから。みんなに余計な心配かけられへんし」

恵美は僕が思っているよりずっと強いのかもしれない。 僕が恵美なら……きっとそんなことを考えている余裕はないだろう。身内の不幸っていうのは、かなりつらいことのはずだ。それが仲のいい姉弟ならなおさら。

「そうか」

「じゃあ明日、みんなで九時くらいに司の家に行くから。」

「ああ」と言って、僕は便利な機械と便利な機械との通信を断った。でも、僕が持っているそれは、まだここではない何処かと通信している。

僕は電源を落として、ベッドに寝転がった。

目を閉じると意外に早く眠りが手招きをしてきて、僕は風呂に入っていないことを思い出したけれど、結局眠りにつくことにした。風呂は少し早めに起きて入ればいい。

今日は色々ありすぎた。
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