天体観測
セットした覚えのない目覚まし時計がなっていた。どんな夢を見ていたかは思えだせないけれど、悪くない夢で、それだけに途中で起こされたのが腹立たしい。

おまけに今日は朝から猛烈に暑い。セミはもう公演を開演している。このペースで夕方まで保つのだろうか。

時刻は昨日と同じ、七時を指している。僕は起き上がってダイニングに向かうと、既に母さんは起きていて、寝巻姿のままホットコーヒーを飲んでいた。

「こんな暑いのに、よくホットなんて飲むね。僕には真似できないよ」

「どんな暑い日だって、お風呂は熱いの入るじゃない?それに比べたらホットコーヒーを飲むことなんて可愛いものよ」

僕は適当に相づちを打ち、自分のアイスコーヒーを入れた。

「今日は起きるの、やけに早いね。何処か行くの?」

「恵美とその他複数と、滝を見に行くんだ」

「滝?箕面の?」

「うん」

「たしか……あそこは」

「関係ないよ。滝は滝。マイナスイオンが出てて、涼しかったらいいんだよ」

僕は恵美に言われたことを、そのまま言ってみたけれど、恵美が言うのと、僕が言うのとは、ニュアンスの違いが明らかだった。まあ、言う対象が違うからかもしれないけれど。

母さんは案の定「生意気」と言い、自分の部屋に消えていった。

僕はダイニングテーブルにコーヒーを置いたまま、昨日入れなかった風呂に入ることにした。
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