天体観測
箕面は、春の花見シーズンや秋の紅葉シーズンには観光客で混雑するが、夏の日差しがサンサンと照りつける今の時期、観光客らしい人は皆無で、地元民の楽園のようになっている。

「どうやって行く?俺初めてだからわかんないよ」

「ここから滝までやったら『滝道』通ってだいたい四十分くらいちゃうか」

僕と村岡は恵美の方を見た。

「『行くぞ。野郎ども』って言ったのは誰だっけ?」
僕は顔を恵美に向けたまま村岡に言った。

「わかったわ。ついてきいや。行こう。紗織」

雨宮は黙って恵美の後についていき、僕と村岡もそれに従った。

箕面駅から滝までは、比較的、緩やかな道のりで、秋に来れば見事な紅葉を見せそうな、モミジやカエデがたくさんあった。

「ここは夏に来るところじゃないな」

「なんで?気持ちいいやんけ。緑は夏にこそ映えるもんやぞ」

「俺は村岡みたいな健康優良児じゃないんだ。それに、今日は暑すぎる」

「体を動かさな。若者なんやから。今しか出来ひんことやぞ?」

「出来なきゃ出来ないで困ることでもないだろう?いよいよの時は歩くなり、泳ぐなりするさ」

「足立ってかなり冷たいな。さっきのあれも、やりすぎちゃう?」

村岡は顎で、軽く恵美を指した。

僕は少しため息をついた。
これほど説明するのがわずらわしいことはない。

「恵美が泣いたら、黙って見てるのが一番なんだ。大抵は違う内容のことで泣いている。要するにさっきのあれはただ、きっかけにされただけなんだ」

村岡は僕と恵美を見比べて、僕の顔を舐め回すように見た後、さっきと同じようにニヤニヤしながら言った。

「お前らやっぱり付き合ってんねやろ?」

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