天体観測
星々の煌めきは、一瞬の出来事のようだった。その刹那の輝きは、僕らの疲れを癒してくれた。

「やっぱり最高やね」

恵美はまだ上を見つめている。その視線の先は、果てしなく遠い。

「最高だ」

今度は曖昧な答えをしない。素直にそう思う。最高だ。

「みんな、起きてるかな?」

「かもしれない」

僕は恵美を見る。恵美はまだ顔を下げていない。

「私ね、星を見ると泣きそうになる」

「好きなだけ泣けばいい」

「なんでよ。嫌やわ」

「俺がいつもそばにいるから。好きなときに、好きなだけ泣けばいい」

恵美はようやく顔をこちらに向けて、僕らはキスをした。

僕らは三十秒ぐらい、そのまま唇を重ねていた。僕らの上に、星がないのが残念だった。

「戻るか」と、恵美から離れて僕は言った。

恵美は頷いて、僕らは大きなホールを後にした。


「二人で何してたんや?」

HIROに戻ると二人は起きていた。雨宮はまだ眠たそうな顔をしていたけれど、村岡は寝ていたことが嘘みたいな顔をしている。

僕らは村岡に返事をせずにカウンター席に並んで座った。

「どうやった?」

「最高やった。ね、司」

その「最高」が何を意味しているかわからなかった僕は、「プラネタリウムはね」と答えた。
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