天体観測
僕の家の近くには、二つの公園がある。一つはすべり台やブランコ、鉄棒などの遊具がある大きな公園。ここには夕方までは子供やその親が、夜からは地元の不良がいる。もう一つは、公園と呼ぶにはおこがましく、四六時中、人が寄り付かない、広場のような場所だ。

村岡は後者にいた。

村岡は公園に一つしかないベンチに座って、スポーツ飲料を飲んでいた。

「何時だと思ってるんだよ」

「十二時やな」と、時計を見ずに村岡は言った。

僕は返事をせずに、村岡の隣に座り、「どうした?」と聞いた。

「ちょっとな」

「ちょっとで呼ばれたんじゃたまらない」

「ええやんけ。俺とお前の仲やん」

「たいした仲じゃない」

「ひどいわ。司くん」

「うるさいよ。用は何なんだ」

「いや、ただ家に帰りたくないから暇潰してたんやけど、一人じゃ場が保たんのよね。だから足立を呼んだわけ」

「別に俺じゃなくてもよかった」

「そうかもしらんけど、俺は足立じゃないとあかん気がしたんや」

村岡は、空を見た。僕も倣って、空を見る。空は曇っていて、月すら見えていない。

「なあ、この雲の上には何があると思う?」

「何って……やっぱり空じゃないか」

「そんなん俺たちの顔の位置も空やろ」

「じゃあ何なんだよ。宇宙、とか言うなよ」

「そうやな……わからんな。俺にはわからん」

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