天体観測
「それじゃあ答えになってない」

「しゃあないやん。わからんねんから」

僕らは黙って空を見た。僕は思いをはせる。遥か数十キロの彼方、星と僕らの間に。それは果てしない妄想にすぎないけれど、感じることが出来る。

「行ってみたいねん」

「え?」

「だから雲の上に行ってみたい。そりゃあ飛行機とか乗ったら行けるけど、そういうんやなくて、肌で感じてみたい。そこの空気を。まあ、今の科学やったら宇宙に行くより難しいことやろうけどな」

村岡は空を見上げながら真顔で言った。一方の僕は「あんがいロマンチストなんだな」と、ありふれた答えを返した。

「気にならへんか?」

「俺はどっちかって言うと、そのさらに上の輝きに興味がある」

「星?なるほど、今日はプラネタリウムに行ってたんやな」

僕は「うん」と頷く。それ以上は別に話してもよかったのだけれど話したくはなかったのだ。

「さっき、家に帰りたくないって言ってたよな?それって、何で?」

村岡が顔を下げて僕を見た。その瞳は虚ろで、まだ雲の上を見ているようだった。

「俺の親父な、厳しい人やねん。門限は厳しいし、サッカーやること反対するし、試験で二十位以下とったら小遣いなしやし、かなり時代錯誤してる人間やねん。だからやな。帰りたくないのは。反抗期みたいなもんや」

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