天体観測
「でももうプロになるんだろ?反対したって意味がない」

「プロになったってすぐ飯食っていけるわけじゃないやんか」

「寮に入るんだろ?」

「地元のチームやからわからんな」

「複雑だな」

「そうやな」

村岡は立ち上がって、ジーンズを叩いた。

「帰るわ」

「どうやって?今からなら終電にも間に合わない」

「近くにバイク、停めてるから」

「そうか。じゃあな」

村岡は右手を挙げて闇の中に消えていった。闇に慣れてきたはずの僕の目にも、もう姿を捉えられない。単色無音の闇が僕を包む。

僕はベンチに残って、一人、闇に目を凝らす。その先に真相がある気がした。僕は闇に目を凝らす。けれどその先には何もなかった。
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