天体観測
「事件のこと?」

僕はわざとらしく首を傾げて聞いた。

「その……目撃者がいないんやったら……」

「いないなら?」

「第一発見者に聞いてみるんはどう……かな?」

僕は顎に手の平を置いて、ドラマに出てきそうな探偵みたいな格好で、言った。

「第一発見者か……たしかにそれしか手が無いかもしれない。いつまでも現場検証ばかりじゃ気が滅入るしね。今日にでも父さんに聞いてみる。教えてくれるかわからないけど」

「なんで?仲……悪いとか?」

僕はそれを聞いて昨日の夜の村岡を思い出した。

「いや、医者の守秘義務を頑なに守ってるんだ。きっと、恵美がいたらいいんだろうけど」

雨宮は「よかった」と微笑んで、すぐに顔を伏せた。何が恥ずかしいのか僕にはわからない。

僕は聞いた。

「村岡とは結構話してたみたいだけど、俺と話すのって苦手?」

僕がもっと気が利いた人間だったら、いや、せめて父さんの息子でなかったら、こんなことは言わなかっただろう。やはり僕は先天的に人付き合いが苦手なんだ。

雨宮は飛んでいきそうなくらい首を横に振って、勢いよく顔を上げた。

「いや……違うよ。あんね……その……」

そう言ったきり、雨宮は喋らなくなった。僕もそれが答えだと思い、話さなかった。僕らの間に作為的な沈黙が流れる。僕にはそれを止める術がなかった。

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