『若恋』若の嫉妬【完】
ざわざわ。
明かりがついた時にはもう体育館を走り抜け校舎の屋上への階段を掛け上がってた。
「奏さん?」
「どうしてって顔つきだな」
鳩が豆鉄砲を食らったみたいに見上げてる。
「なんとなく拐ってきた」
「?」
「なんとなくだ」
「?」
キスシーンがあるから我慢出来なくて拐ってきたとは口が裂けても言うつもりもない。
途中ですれ違うメイド服着た奴や、家族連れ、教師と蹴散らして屋上への階段を駆け上がっていく。
屋上へ着くとりおに命じて開けさせた。
開けた瞬間にさあっと風が舞う。
文化祭日和の青空が広がる屋上の端まで歩いてそこでりおを下ろした。
「りおは樹が好きなのか?」
「え?」
あまりにも唐突過ぎてりおが首を傾げてしまった。そんなことを言いたいんじゃないのにうまく言えない。
「なんでもない」