『若恋』若の嫉妬【完】
「用を足しに行ってくる」
龍と戦い、樹が見事に勝って王女に掛けられた眠りの魔法が解けた。
後はキスシーンだ。
走って体育館の舞台袖に駆けつける。
「待った!」
「大神さん」
樹が姿を見るなり破顔した。
「来るかなと予想してました」
「悪りぃ」
「後はなんとでもなるから」
舞台ではりおの眠る姿がライトに照らされている。
いつもはポニーテールの髪型だが下ろされている。
キスシーンをみんなが見つめて待っている。
「明かりを落とせ」
その一瞬でりおを拐う。
樹が顎をひいて、同時に舞台が真っ暗になった。
―――今だ
舞台袖から走り寄り、ドレスを着たりおを横抱きにして逃げた。