一人睨めっこ

四節 開始

 只今午前一時四十五分。

「始めるか」

 水を入れた洗面器に、紙と筆ペン。
 洗面器を、出窓に置いた。
 今日は雲の無い夜で、満月が輝いていた。
 なので、部屋の明かりを消しても月明かりでまあまあ見える。
 俺は早速、紙にあの呪文のような言葉を書いた。

「よし」

 筆ペンはそこら辺に置いておき、紙を水に一瞬だけ濡らした。

 そして指示通り、人差し指で文字をなぞりながら読んだ。

「ソシソアカ ミクニツクモ」

 シーン……

 当たり前だが、何も起きない。

 何か馬鹿らしいな。

 そう思いながらも人差し指でおでこから鼻の先までなぞった。

 そして――

「睨めっこしましょう。笑うと負けよ、逃げても負けよ、あっぷっぷ」

 一人睨めっこが始まった。
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