一人睨めっこ
 俺は洗面器の中を覗き込んだ。
 水面に俺の顔が写っている。
 
「……」

 俺はその顔を眺めた。

「…………」

 うーん。

「………………」

 何も起きねぇ。

「……………………」

 もう、やめようかな?
 多分このまましてても変化ないし。
 変化無かったって言えば淳達も納得するだろう。

 俺は水面に写った自分から目を逸らそうとした。


(逃げたら、負けだよ)


「!?!?」

 声が聞こえた。
 俺の……頭の中から。

「は……何だよ……」

 俺は水面に写る自分を見た。
 俺は今、驚いた表情をしてると思う。
 いや、している。

 なのに――
 水面に写る俺の顔は、得意気に笑っているではないか。

(よう、一応初めましてかな?)

 頭の中で声が響いた。

「だっ、誰だよ!!」

 俺は冷静さを失っていた。

(俺はお前だ。そして又お前も俺だ)


「……はあぁ!!?」
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