一人睨めっこ
『よしっ、そろそろ帰るか』

「え、もう?」

『もうって……七時過ぎだぜ?』

 淳は時計を指差した。

「……そか」

『早く帰らないと母ちゃんに怒られるし!』

 淳は、あはっと笑った。

 ああ、淳はいいな。
 自分を待ってくれてる家族が居て。

『じゃーな!!』

「……じゃ」

 淳は家に帰っていった。


「はぁ」

 この世はなんて不公平なのだろう。

 地味で平凡な俺。
 明るいし天才な淳。

 いつも一人な俺。
 一家団欒してる淳。

 淳を妬んでる訳じゃないけど。

 何故、淳ばかりなのだろう。
 何故、淳ばかり良い物を持っているのだろう。

 少しくらい俺に分けてくれても良いんじゃないか。
 こんな俺に生きる意味はあるのか?
 何の為に生きているんだ?
 生きなきゃいけないのか?

 心の問いに、答えは出なかった。
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