一人睨めっこ
『麗香ぁ……』

 林田は床に膝をついた。
 目には、涙を浮かべて。

「林田……」

 俺の知っている

 性格悪くて
 嫌味ばかり言って
 気が強い

 林田は居なかった。

 そこに居たのは、彼女を失い虚脱し覇気の無くなった人間だった。

『……あ……きゃああ!!』

 外から誰かの叫び声が聞こえた。
 通行人が高村麗香を見つけたのだろう。


 ……やばい。

 俺は時計を見た。
 もうすぐ五時になる。
 こうしている間にも、日没は近づいている。

 時は、止まらない。

 ましてや警察等が来たら、俺達は確実に話を聞かされるだろう。
 そうなっては、月が出てしまう。

 どうする?
 どうするんだ、俺。
 いいや、どうしようもない。
 俺達の選択肢は、 このまま警察が来るのをじっと待つか――


「……家を出よう」
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