一人睨めっこ

五節 理想

『あっ、よう真琴!!』

「よ、よっ……」

(元気ないなぁ〜)

「う、うるさいっ!」

『? どうした真琴』

「あ、何でもない」

 ここは学校。
 一人睨めっこはあの十分後にやめたはず。
 なのにまだ頭の中から声が聞こえてくる。
 俺はおかしくなったのか?

『なんであの時メールくれなかったんだよー?』

 淳の言う“あの時”とは、一人睨めっこの時だろう。

「悪い」

『何かあったのかと思った』

 え、心配してくれてたんだ。
 ちょっと嬉しかった。

(何も無かったって言っておけ)

 え!!?
 滅茶苦茶何かあったのに!!
 これとかこれとかこれとか!!

(いいから、言え)


「……何も起きなかったから」

 俺は淳にそう告げた。

『そっか! まぁ実際学校来てるもんな!』

 淳は笑った。

 ごめん……嘘ついちゃった。
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