一人睨めっこ
 俺は淳から少し離れ、小声で言った。

「何で淳に言っちゃ駄目なんだよ?」

(言ったとしても普通の人間が信じられるか? 頭の中から声が聞こえるー……なんて)

 ゔ、確かに。

(さらに気味悪いと思われるかもよ?)

 ゔゔ。

(それに――)

「あーもう分かったから!!!!」

 俺は思わず大声で言った。

「あ……」

 シーン……

 俺の声に周りが静まり返る。

(あほ)

 あっ、あほだと!!?
 今の状況では否定できない。

「ごめ――」

 皆、俺を見ている。
 うっわ、恥……。


『何一人で叫んでんだよ、キモッ』


「林田……」

 周りから微かな笑い声が聞こえる。
 俺はその場に居られなくなり、教室を出ていった。

(――っおい、何で言い返さなかったんだ?)

 頭の中の俺が問う。

「無理だよ……」

 俺にそんな強さは、無いんだ。
 そんな勇気も、無いんだ。
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