一人睨めっこ
「起き……たのか」

 俺の心臓が今にも飛び出しそうだ。
 いや、さっき二回程飛び出したかもしれない。

『部屋のすぐ外で叫ばれたらそりゃ起きるわよ』

 葛西さん、ご機嫌ななめ。

「い……いつから?」

『藤崎がうわあとか叫んだ所為で起きましたけど? あんたの所為で!!』

 ほ……。
 じゃああのやり取りは聞かれてないな。

『何ほっとした顔してるのよ?』

 ギクッ……なかなか鋭いな。

「な、何でもない」

 俺は全力で否定した。

 葛西はまだ納得いっていなさそうな顔をしていたが、ここで優兄と駿兄が風呂から上がって来たので追及されずに済んだ。

『んじゃー入ってくるわ』

 葛西が風呂へ向かった。

 よし、何とかごまかせた。

 そう思ったのも束の間。
 ごまかせられない事が残っていた。


『おい発情期……』

「それを言うなって!!」

 このあだ名定着しそうで怖い……。
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