銀盤少年

俺が勝てば、狼谷は本格的にスケートをやることになる。


解放しなくちゃ。


狼谷のために、ヒロのために、そして俺自身のためにも―――


身体がほぐれて俺はジャンプの練習に入ったが、狼谷は滑りに集中しているのか、俺のジャンプコースに入らないようステップやターンを引っ切り無しに確認していた。


こういう何気ない動きもキレがあって凄く上手い。元世界ジュニア代表は伊達じゃねえな。


そういや、ハンデってなんだろう。


まだヒロから詳しい勝負の内容も聞いてはない。ショートを滑って戦うしか聞いてないから、昨シーズン滑ったSPの音源だけは持ってきたけど。


身体も十分温まった頃、リンクサイドからヒロに呼ばれた。


「じゃ、そろそろ始めようか」


ヒロの言葉に、俺と狼谷は頷いた。


「前に言ったけど勝負内容はSP。基本的なルールは現行に乗っ取るけど、採点は旧採点方式で行います」

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