銀盤少年

張りつめた糸が切れた瞬間。


狼谷は唇を一文字に結び、拳を固く握りしめた。


もう滑ることは出来ないだろう。ジャッジが演技の中断と見なして曲を止める。


あくまで中断。だけど事実上の棄権。


狼谷の演技が終わったのだ。


「だから言ったろ、俺達じゃ止められないって」


碧眼の双眸を二人に向けながら、ヒロは全てを見通していたかのような口ぶりで口角を上げる。


「草太君、悪いけどジャッジとスタッフに選手交代を伝えてきてくれるかな。優希ちゃんはアイシングの準備を」


「わ、わかりました」


「うん。任せて!」


ヒロはジャージを脱いでテキパキと準備を始める。


控え選手ということですぐに交代出来るよう準備をしていたヒロには頭が下がる。
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