銀盤少年
運命のフリー
毎度のことながら、六分間練習はピリピリとした緊張が走っている。
特に狼谷と仁の二人の覇気が凄まじい。
緊張感がオーラになって伝わって来て、二人のすぐ側を滑ると全身がぶわっと波打ち鳥肌が立つぐらいだ。
そういや最近狼谷と話してないなぁ……と、こんな時にどうでもいいことを思い出す。
試合が近づくと部活ではなく直接先生の元に行っていたから、ここ最近は狼谷と顔を合わすことがなかったのだ。
ヒロとは同じクラスだから近況を聞いてはいたが、昨日のショートの滑りを観れば調子が良いことは一目瞭然。
まあ会っていたとしても、ネチネチと嫌味やら悪口やらを言われて口論になるのは目に見えてるけど。あいつ俺のこと嫌ってるみたいだし。
仁はというと、滑走順の抽選会の時にちょっとだけ話をした。
あっちの方から声をかけてきて、開口一番「色々ありがとな」と感謝された。なんのこっちゃ。
だけどすぐに狼谷のことだと気付いて、二人の間にあった根深い問題が解決したことを悟った。