銀盤少年

俺別になんもしてねーんだけど。色々狼谷のケアをしていたのはヒロだから、その言葉はヒロに伝えてやれ。


と言ったら、仁はニシシッと笑いながら「照れんな!」と肩パンされた。地味に痛ぇ。


でも良かった。仲直りしたこともそうだけど、これで狼谷は思う存分スケートに集中することが出来るだろう。


狼谷の練習中のビビりっぷりは、こっちが心配になるぐらい酷かった。


一緒に練習をしている時、俺が狼谷に近付いたりすれ違ったりすると、奴はあからさまに動揺してピタリと停止して胸を押さえるのだ。


吃驚して止まった、という言いわけが通用しないほどの焦りよう。


だから狼谷のジャンプコースにうっかり俺が入ってしまった時、奴は動揺を隠すために俺を怒鳴り散らしたのだ。


どのような状況で仁に怪我をさせてしまったのかはわからないけど、人が近づくことに恐怖を感じているのは明らかで。


橋本杯で思うような演技が出来なかったのは、接触する恐怖が原因なんじゃないかとも思う。


人の動きを気にし過ぎるあまり、自分の練習が捗らない。
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