恋を知りたくて・・・~君と出会ったベンチ~
   「はぁ・・・」
   朝からため息しかしていない。  
   竜の顔を見るのが怖い。
   昨日帰ってどんなメールをしたのか、 
   絵文字はどんだけ使ったのか、電話番号は交換したのか・・・
   嫌なことばかり浮かんでくる。
   まぁ教室では竜をみることはない。
   次会ったときにまともに顔を見て話せる気がしない。
   
   昼休みがきた・・・ 
   いつもは嬉しいお弁当の時間も今日は全然楽しくない。
   竜のことばかりが頭に浮かんでくる。
   
   今日は歩く気力もなく教室でお弁当を食べた。
   それも窓側。私の教室の窓からはちょっとだけ
   ベンチが見える。いっつも授業中、そこから
   竜をながめるのが大好きだった。
   でも今はみるのが怖い。 
   また笑顔で女の子と話してたらなんて考えるとみれない。
   竜の笑顔は私だけが知っておきたかった。
   竜の秘密の場所も私誰が知っておきたかった。
   
   私ってわがまま?
 
   恋は楽しいけど寂しくてせつない。
   
   「おーい美音?どうした~?」
   「え?あっ・・・なんでもない。ゴメンちょっとボーっとしてた」
   私の様子をうかがってくれるのはいつも香奈だった。
   やっぱ香奈には相談しようかな・・・
   「なにかあった?」
   「あのね香奈!私ね・・・」
   いざとなったら言いにくい。
   「なによ~」
   「実は・・・好きな人がいるんだ・・・」
   言っちゃった~。
   「あ~小林竜でしょ?」
   「え?なんで?」
   「みてたら分かるし!私たち何年一緒だと思ってんのよ」
   「何年って・・・高校で知り合ってまだ1年たってませんけど?」
   でもずっと一緒にいたみたい。
   「そうだっけ?まぁ何ヶ月でも何日でもいいや」
   なんか自然と笑いがこぼれた。



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