サクラドロップス

「やだ、何コレ・・・新芽?」


大胆に切られた幹の端から、小さな小さな、緑色の葉っぱ。


「サクラ、気付いてたの?コレ、捨てちゃダメって?」

「みゃーあ」

得意そうに、返事をするサクラ。

「そっか。了解。サクラが言うならそうするわネ。こんなに小さくても、頑張って、芽吹いたんだものネ」

「みゃあ」

「ありがとう、サクラはエライエライ」

カシカシとサクラの頭を撫でてから、アタシはパキラを元の位置へと戻してやった。

またアル中の状態になれば、勝手にアタシが世話をするだろう。

なんて、都合の良すぎる考え方かしらネ。


パサリとベッドに倒れこむと、不思議とやわらかな香りがして、アタシはとたんに眠くなる。


とりあえず今日は何だか色々訳の解らないことが多くて疲れたから、明日の帰りに観葉植物の本でも買ってこよう。

うん、明日。


明日・・・




明日は、アタシの兄の、10回目の命日なのだ------
< 191 / 254 >

この作品をシェア

pagetop