サクラドロップス

「ふうん、そっか。可愛いわネ」

何だか少し微笑ましくなりながら、アタシ。

と、ここで、信号が青に変わり、アタシは後ろの人に背中を押されて歩き出す。


週末の夜、ウチのニコニコ商店街の夜ははやいけれど

この辺りの夜はながく、青にせかされた人並みに揺られ、交差する歩道でアタシは一瞬自分の行き先を見失う。


人の波

ザワザワと、頭に響くノイズ

苛立ったタクシーのクラクション

高い位置に光る、バスのライト

人の波、人の波、人の波


・・・と。


「ユキさん?大丈夫ですか?」

と、安藤に腕をひかれ、アタシは無事に横断歩道を渡りきった。

「ああ、ごめん。アリガト」

「いいですケド。ダメですよ、もっと、強い意志をもって歩かなきゃ。ユキさん細いんだから、どんどん人の流れに飲まれちゃいますよ」
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