【完】そばにいるだけで
「お疲れのところ悪いんだけど、今度は桐生くんがターゲットなんだ」
すると桐生くんにしては珍しく、少し目を見開いた。
「僕?」
「そう、桐生くん。注文が入っているから、写真撮らせて」
わたしは桐生くんが握っているデジカメを見ながら、手を差し出した。
桐生くんは少し困った顔をしながら、渋々わたしにカメラを渡すと、後ろに手を組んで構えた。
桐生くんから少し離れて、カメラを構える。
小さな液晶画面に桐生くんが映る。
このアングル、誰にも渡したくない。
そう思ったけれど、
「じゃ、撮るよ」
と言って、シャッターを押してしまった。