美味しいカクテルをどうぞ
「ありがとっ、美咲!!大好き~!」



苦しいくらいに抱きしめられ、パッと離れたかと思うと私の手を引いて歩き出した。

〔オリオン〕の人気NO.1の話題を中心に(美琥が一人でしゃべってた)、目的地へと足を運んだわけだけど。



「ご指名は?」

「もちろんっ、レイくんで~!」



〝営業スマイル〟に対して〝営業スマイル〟で返した美琥。

あーあーあー・・・

美琥のせいで顔真っ赤じゃん。

哀れみの視線を彼に投げかけている間に、席へと誘導された。



「ね、ね、楽しみだね!!」

「・・・ねぇ、もしかしてさ、ホストを落としてみようとか考えてないよね?」

「え、そのために来たんだよ?それのついでにレイくん!」



・・・それで営業スマイルだったのか。

納得はできたけど、そんな事しにホストクラブなんか行くんじゃねぇよ、と心の中で思った。



「ご指名、ありがとうございます。レイです」



あー、きたのか。

斜め上に顔を向けると、人形みたいな容姿の男が笑みを携えてこちらを見据えていた。

これが、〔オリオン〕NO.1か。

美琥はそれに愛想良く、というか早速メロメロになっていて、何故か私の隣に座ったレイと話していた。

・・・あのさぁ、私を挟んで座るのやめてほしいんですけど。

美琥の隣には、ヘルプの子がいる。

テーブルのほうに気を向けながらも、二人の話を盛り上げていた。



「あははっ、ユウくん面白いね~!」

「そうですか?」



ヘルプの子はユウっていうのか。

キョトンと答える彼を見て、この子は天然なんだと思った。

というか、こういう仕事に就いてるんだったら社交辞令と受け取って流すべきでしょ。

しょっちゅう話を振られるも、「あぁ、そうだね」「うん」とか簡潔な返事しかしなかった私は、三人を観察するほうが楽しく思えた。
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