モノクロの音色よ鮮やかに響け
【第五章】やっぱり彼は天才だ

1、束の間の日常

入院から3週間経ち、川畑は退院となった。

経過は順調で、2週間程で手足の傷は殆んど癒えたが、片足をを引きずって歩くには盲目の川畑は転倒のリスクが高いから、と担当医の判断でリハビリの為に延長した。
 
川畑はエコーロケーションを使いながら、すぐにリハビリ室を自由に動きまわれるようになり、傷の回復よりもエコーロケーションの能力で周囲を驚かせた。

手すりつきの歩行訓練器や、筋力トレーニング用の器具、ストレッチ用の台など、物がたくさん置かれているリハビリ室の中を、舌打ちをしながらまるで見えているかのように避けて歩く川畑に、医師は興味を持って色々尋ねて来た。

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