モノクロの音色よ鮮やかに響け
「当時は少し話題になってたのよ。盲目の天才ピアニストだって。
でも一部の人からは、彼の父親の川畑泰士の音と全く同じ、コピーにすぎないって酷評されたの」
「そんな…」

あぁそれで…私がCDと間違えた事に、神経を逆撫でされたのだ。

川畑を、傷つけてしまった…!

私は、思慮が足りなくて川畑に黒服が好きなのか聞いた初日の事を思い出した。

あの時は、すぐに笑って許してくれた。
でも今度は、音楽家としてのプライドがかかっている。

結婚式での演奏が、公の場に出なくなった理由だとしたら、私が川畑邸に居る限り、もう二度と生演奏は聴けないかもしれない。

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