別れの曲を君に(短編)

部屋の入り口に佇む綾の気配に気付いたのだろうか、男が、ふっと顔を上げた。


重なる視線――。


驚きに見開かれる、男の黒い瞳。


男の手が止まり、ぴたりと、ピアノの音が止む。


「き……みは?」


男の発した声を聞いて、綾は驚いた。


やだ、声まで良平に似てる――。


少し低めの、ハスキーボイス。


もっと低くて深みのある声だけど、良平が大人になったら、こんな声になるのかも知れない。

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