別れの曲を君に(短編)
「あ、邪魔してしまって、ごめんなさいっ!」
綾は、ピアノの演奏を中断させてしまったことに微かな罪悪感を覚えて、思わずぺこりと頭を下げた。
「……いや、良いんだよ」
答える男の声が、微妙に揺れる。
感情を無理に抑えているような、そんな声音だ。
「あの、電気、付けましょうか?」
これでは、真っ暗で譜面も見えないだろう。
綾が努めて明るく声を掛けると、男は『否』と、ゆっくり頭を振った。