別れの曲を君に(短編)
「……このままにしておいて貰えるかい?」
穏やかな声は、やはり揺れている。
「あ、はい」
音楽室に沈黙が落ちた。
静かな、痛いほどの時の流れ。
それは、決して不快ではないが、なんだか居たたまれない。
「あの、私はもう、帰らないと……」
本格的に、外は夜になっていた。
いくら何でももう帰らないと、家で心配するだろう。
「それじゃぁ、お邪魔しました」
『さようなら』と小さく呟いて、綾が部屋を出て行こうとすると、男が声を掛けて来た。