HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
『ああ…っつても結構古いと思うケド。ありゃ5針ぐらい縫ったあとだな。骨のすぐ近くだし、随分腕のいい外科医が施術してくれんじゃね?ほとんど目立たないぐらい』
「それ!いつぐらいの傷か分かる?」
あたしは再び階段を上がりながら勢い込んだ。気持ちが逸って大股に一段飛ばしをした。
『…いつぐらいって。俺は外科が専門じゃないから詳しいことは分からねぇよ』
保健医があたしの剣幕にちょっとたじろいだように声を潜めた。
「大体でいいんだよ。いつぐらい?」
それでも食い下がるあたしに保健医は、
『さぁ…はっきりとは言えないけど…少なくとも1年以上前の傷だってことは確かだな…』
と渋々答えた。
「傷の深さは?後遺症はある?」
畳み掛けるように問いかけると、
『知るかよ。再三言うが俺の専門は内科だ、外科じゃねぇ』
と向こうもイラだった様に早口に答えてきた。
あたしはため息を吐きながら、部屋を移動した。
「ごめん。今のは気にしないで。それよりこの電話何か変なことはない?雑音が入るとか、聞きづらくなったりとか」
あちこち移動しながらあたしは保健医に問いかけた。
保健医は不審そうに声を低めて、
『別に普通だけど。お前何やってンだよ』と質問が返ってくる。
「普通ならいい。じゃね。久米のことはありがと。あと、あたしが久米のこと気にしてたってことは水月には言わないでよ」
『お前が浮気しそうってことか?』
あたしはちょっと肩をすくめて、
「言ってもいいけど、その場合あんたの恥ずかしい写真バラまくからね」
と脅してやった。