HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
こんな不安な夜は―――水月に傍に居てほしい。
彼にきゅっと抱きしめられたい。自分という殻を破り捨て、思い切り甘えて、そして無条件に甘やかしてもらいたい。(そんなことしたことないケド)
チョコレートのように甘く、羽毛みたいにふわふわした水月に―――
そんな彼を想って、
あたしは部屋にあるノートパソコンを立ち上げた。
メールを開くと、送る宛てもないメールの本文を作成する。
“Dear 水月
あなたがこのメールを見ているとき、きっとあたしはあなたの近くに居ないだろう。
これは愛の告白なんかでもなければ、熱烈なラブレターでもない。
これはあたしの物語り。
あたしだけの白雪姫ストーリー。
ねぇ水月、知ってる?
白雪姫は王子様のキスで目覚めるの。
あたしは王子様なんて待っている性分でもないし、そもそも魔女に殺されるへまなんてしない。
でも、もし王子様のキスで目覚めたら―――
その後のストーリーが誰知れずひっそりと展開しているのなら。
もし魔女が再びあたしを殺そうと企んでいたら……
あたしは立ち向かっていくだろう。
生きるか、死ぬか―――
あたしは死にたくない。
これは白雪姫が目覚めたあとのストーリー。
このストーリーは今でも続いている”