HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
結香さんが笑うたびに耳元でフープが揺れる。
地面に伸びた黒い影も一緒に揺れて、一定間隔を置いて揺れるその影に、催眠がかかったように心もふわふわと揺れた。
「大学は楽しい?」僕が聞くと、彼女はちょっとだけ笑って、
「楽しいよ。友達もたくさん居るし」と遠くを見た。
「大学入って…ってあんまりいいとこじゃないけど、学校ってこんなに楽しいところだったんだ、って初めて気付いた。今まで勉強ばっかだったから。
ライバル蹴落とすことで必死で」
「そっか。それは良かった」
僕はほんのちょっと笑った。素直な感想だった。
少なくとも心のよりどころだけはあるようだ。
「恋もしたんだ。はじめての恋。今までそんなのとは無縁だったけど、がんばってお洒落して勇気出してデートに誘ったりしたら付き合うことができて」
「その彼とは?」
僕の何気ない質問に、結香さんは無表情を向けてきた。
その顔を見て聞いてはいけないことだと悟った。バツが悪くて顔を逸らそうとすると、
「ねえ先生。エミナの言葉を信じないで。あの子こそ裏で何を考えてるか分かんない」
と、突如的外れな答えが返ってきて僕はまばたきをした。
「だってあの子―――あんな真面目な顔して、あたしの彼氏を寝取ったんだもん」
え―――………