HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
あたしの腰に手を回してるものの、水月はこの先をする気がなさそうだ。
やっぱりここが学校だからかな。
イケナイことをしてるって思うと余計ドキドキするんだけどね。
こうゆうこと考えるあたしって、森本さんから言わせれば淫乱なのかな。
「そう言えば水月、森本さんのこと気にしてたよね?」
さっきの森本さんの冷たい視線を思い出して、あたしは聞いてみた。
「え?…うん。森本がどうした?」
水月の声にちょっとだけ緊張が走ったように思えた。
「大したことないけど、さっき梶たちが教室で堂々と下ネタを“お喋り”してたら、冷たい目で睨んでてさぁ『サイテー』だって一言。
いかにも潔癖そうな森本さんの言うことだよね」
「え…うん。まぁそうゆうとこは真面目そうだよね」
「免疫なさそうだし、王子さまを待ってるタイプかもって乃亜と噂してたの。王子さまなんて所詮幻想だし。
白雪姫が処女で結婚したって話も信じらんない」
「所詮お話だろ?夢を与えるものなんだから」と水月は苦笑い。
「あたしは夢見がちじゃないって?」ちょっと目だけを上げると、
「僕のお姫さまは現実主義者だからね。僕は幻想を抱かれてなくて良かったよ」
なんて笑ってあたしの髪をちょっと撫でてくる。
「あたしの王子さまもちょっとエロいけど、そこも好きよ?」言い返すと、水月は
「エロい…?」と少し呆れたようにあたしを見た。
「普通でしょ?健康ならね」笑って返すと、ちょっと強引に倒される。
頭を打たないように手を敷いてはくれたけど、床の冷たさが背中に伝わってきた。
「いたって健康だ。だからこうしたいと思ってる」覆いかぶさるように水月のキスが降りてきて―――
それでもちょっと考えるように首を捻ると、
「僕は教師失格かな?」なんて言っている。
「今更何」笑い返して水月の頬を撫でると、無情にも午後の授業を報せる予鈴が鳴った。