HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~
あの人懐っこい瞳の裏に―――
“あんたから奪ってやる”
なんて挑発するような感情が、浮かんでいるように思えた。
単なる考えすぎだと思うけど。久米が僕と雅の関係に気付いているはずもないし。
だけどあの目―――
あの目にじっと見られると、こっちの考えなんて何でも見透かされていそうで、
正直ちょっと怖い。
そんなことを考えていると、
「神代センセー」
と声がして、同時に教室の扉が開き、まこが顔を覗かせた。
「どうしたの?」
まこがわざわざ教室に来るなんて珍しい。
「ついでだ、ついで。俺はもう帰るんでね。千夏の検診のため病院に付き添うから」
「そんなこと聞いてないって。ってか言わなくてもいいよ」
ちょっとだけ肩をすくめると、
「何だよ、ご機嫌ナナメ?ま、いいや。これさ、森本の忘れ物。渡しといて?」
そう言って手渡されたのは、森本の生徒手帳だった。
「森本、大丈夫そう?ホームルームが終わってすぐに帰ったみたいだけど」
僕がちょっと心配そうに聞くと、
「まぁ顔色が悪いが、受け答えもしっかりしてるし、顔色が悪い以外異常なしって感じだな。それより水月、生徒手帳の中身、覗くなよ?」
顔を覗きこまれて、僕は思わず口を尖らせた。
「人の手帳(って言っても生徒手帳だけど)勝手に見ないよ」
「お前はそうゆうヤツだけど、念のため」
「何だよ、その口ぶり。まこはもしかして見たの?」
探るように目を上げると、
「ベッドを整えてるときに“偶然”見えちまったの」
まこはさらりと言ってそっぽを向く。
意図的に見たな―――僕はちょっと呆れたようにまこを見上げた。